はじめに
理学療法士の尾澤です。小学生の時に硬式野球を始めて野球歴20年以上になります。野球選手のコンディショニング、強化、フォームチェック・修正が得意で、とてもご好評いただいています。
ここ数年、オリックスバファローズの山本由伸投手がトレーニングの一環で使用しているジャベリックスロー(やり投げ)が一躍有名になりました。
人気の一方で、「投げ方がわからない」「ネットで調べても説明がわかりにくい」という声がとても多いです。実際に私がネットやSNS、YouTubeで調べても、
- 習うより慣れろ
- 〜という感覚でなげる
- リラックスして全身を使って投げれば自然ときれいに投げられる
といったような感覚的なものが多く、具体的な説明がされている記事を見つけることができませんでした。
今回の記事を読むと、普段私が指導しているジャベリックスロー(やり投げ)の正しい投げ方と、うまく投げられない方の原因を具体的にわかります。ぜひ、この記事を読んで山本由伸投手のように素晴らしい球が投げられるようになってください。
ジャベリックスローとは?
ジャベリックスローの特徴
ジャベリックスローはもともと陸上競技で「ターボジャブ」というものを投げて距離を競います。小中学生のやり投げの導入として開発されたものです。近年は山本由伸投手が行っていたということで野球界では注目を集めています。基本的に“肩が強い”選手がターボジャブも遠くに投げられると言われています。ターボジャブは重さが約300g以上あり、野球のボール(軟式約130~140g、硬式約140〜150g)と比較しても2倍以上重いです。
ジャベリックスローの効果
野球のボールと比べて重いため自然と全身を使えるようになり、結果的に「肩・肘に負担がないフォームを身につけられる」「肩が強くなる」「速いボールを投げられるようになる」とうい効果があると言われています。
ジャベリックスローの投げ方(説明書の引用)
日本陸上競技連盟のサイトにジャベリックスローの投げ方が書いてあります。
日本陸上競技連盟の資料にもパワーポジションなど遠くへ投げるための全身の使い方は説明されているのですが、そもそも近い距離ですらうまく投げられない場合の投げ方の説明がありません。YouTubeや様々なサイトで投げ方を探しても、日本陸上競技連盟と同じような説明だったり、感覚的なものが多い気がします。
今回の記事を読んでいただければ、まっすぐきれいに投げるための方法がわかるようになります。典型的な失敗例と改善方法、速い球を投げられるようになる理由などもご説明いたします。
ジャベリックスローの使い方
持ち方
でこぼこの端の握る部分(グリップ)は指をかけやすくなっています。親指と中指(右図)でグリップの端をくるむようにして握ります。
全身の使い方
こちらは日本陸上競技連盟のPDFをご参照ください。
次の項目で他のサイトではあまり説明されていない「腕の使い方」を重点的に説明していきます。
腕の使い方
ジャベリックスローがうまくできなくて挫折してしまう方は、腕の使い方に問題があることがほとんどです。野球で肩・肘を痛めてしまう選手は、ジャベリックスローでもうまく腕を使えていません。
ネット上のどの記事・動画でも説明されていない重要な部分は
- 肘・前腕の使い方
- リリースポイント
- リリース後の力の逃がし方
の3つです。それらについて説明します。
腕を上げる
肘が両肩と同じ高さになるように腕を上げます
小指側から腕を振っていく
上半身を開きながら腕を振っていきます。この時に重要なのが小指側から腕を振っていくことです。
ちょうど良いタイミングでリリースする
小指側から腕を振ってきて、上半身から頭の真上のラインでリリースします。
肩甲骨から腕全体を内側にひねる
小指側から腕を振ってリリースした後は、肩甲骨から腕全体を内側にひねって小指を上に向けます。
重要なポイント3選
このポイントさえ掴んでしまえば、肘や肩を痛めにくく安全です。
更に、ジャベリンはまっすぐ飛んでいくので楽しくなります。
- 肘・前腕の使い方
- リリースポイント
- リリース後の力の逃がし方
肘・前腕の使い方
全身を使うから肘は曲げてはいけないと思っている方が多いですが、肘は曲げてOKです。よく肘を曲げてはいけないという記事や動画を見ますが、山本由伸投手の投げるフォームや、ジャベリックスローのすごい選手を見ても肘は曲がっています。最も重要なのは手のひらを正面に向けたまま腕を振らないで、小指側から腕を振っていくことです。
山本由伸投手は投球の際に「肘は使わない」と言っていますが、おそらく肘を曲げないのではなく前腕を捻らない(手のひらを正面に向けない)という意味だと解釈しています。実際に山本由伸投手のフォームを見ると、肘を曲げないのは腕を挙げてくる相だけで、腕を振る相では肘がしなって曲がっています。
リリースポイント
リリースポイントは上半身と同じラインです。
タイミングが遅すぎるとジャベリンの先端が下を向いて遠くに飛びません。
タイミングが早すぎるとジャベリンの先端が上を向いて遠くに飛びません。
リリース後の力の逃がし方
リリース後は必ず肩甲骨から腕全体を内側に捻り、小指が上を向くようにします。そうすることで、リリース後に肘にかかるストレスを軽減させることができます。
ジャベリックスローが上手くできない原因(失敗例)
ジャベリックスローには典型的な失敗があります。そして、それらには共通点があります。
- やりが横になって揺れる
- やりの先端が下がる(叩きつけてしまう)
- 投げた後に肘が痛い
この項目では、これらの実際の失敗例とその原因を説明していきます。
やりが横になって揺れる
やりが横になってしまう原因は、腕を振ってくる際に手のひらがずっと正面を向いてしまうことです。リリースする瞬間は手のひらではなく小指側を正面に向けるようにしましょう。
野球でも手投げになってしまう選手に多い失敗例です。この投げ方はジャベリックスローだけでなく、野球の投球動作でも肘の内側が過剰に伸ばされるストレスがかかって痛めやすいので注意が必要です。
やりの先端が下がる(叩きつけてしまう)
やりを叩きつけてしまったり、良い角度で投げられない原因は、リリースが遅すぎることです。ジャベリックスローの正しいリリースタイミングは体の軸が一直線になった瞬間です。それよりも前でリリースするとやりの先端が下を向いてしまうのでうまく飛びません。
野球の投球動作でも、肘を痛めにくく速い球を投げるためには体の真横までは小指側から腕を振っていき、その後に素早く手のひらを正面に向けてボールをリリースします。体の前の方まで小指側から腕を振ってしまうと、スライダー回転がかかるようになってしまい、リリース後の肘の痛みを招きやすいです。
やりの先端が上がりすぎる(上に行きすぎる)
やりが浮いてしまって前に飛ばず上に浮いてしまう原因は、主に「リリースが早すぎる」か「最初に腕を上げる際に肘が肩のラインより下がっている」ことです。
リリースが早すぎる
ジャベリックスローの正しいリリースタイミングは上半身から頭の真上のラインです。それよりも速くリリースをするとやりの先端が上を向きすぎてうまく飛びません。
最初の腕の上げ方が不十分
また、最初に腕を上げた時に肘が両肩のラインより下がってしまうと、腕を振っていく時に上方向に腕が上方向に加速していってしまいます。そのせいで、やりの先端が上を向いて、やりが飛ぶ方向が上を向きすぎてしまいます。
投げた後に肘が痛い
投げた後に肘が痛苦なる原因は、リリースの後に腕を捻ることができていないからです。
体の真横でやりをリリースしたあとは、肩甲骨から腕全体を内側に捻らないといけません。そうすると投げた後に肘が自然に曲がって、肘の内側が衝突するようなストレスを軽減できます。
野球の投球動作でも、投げた後に腕を捻らない選手は肘の内側の骨がぶつかってストレスがかかり、肘の内側を痛めてしまいます。ひどい場合はこれが原因でMRIで疲労骨折が見つかった選手もいました。ボールをリリースする瞬間〜リリース後はしっかりと肩甲骨から腕全体を内側に捻り、小指が上を向くようにしましょう。読売新聞オンラインの記事の山本由伸投手のわかりやすい画像があったので引用しておきます。
引用元:読売新聞オンライン
エース山本由伸、高校時代から大事にしてきたルーチン…「とにかく打たれない球を投げたい」
https://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/20220531-OYT1T50060/
ジャベリックスローが上手く投げられると得られる効果
ジャベリックスローには野球の投球・送球動作に重要なポイントがたくさん詰まっています。
ジャベリックスローがうまくできるようになると全身がうまく使えて、速くて強い球を投げる力が強化され、同時に肘や肩が怪我をしにくい投球フォームが身につきます。
全身が使えて投げる力が強化される
ジャベリックスローは野球のボールと比べて2倍以上重いです。そのため、全身を正しく使わないと遠くへ飛びません。正しく全身が使えているかどうかが飛距離と軌道にはっきり表れるため、フォームのチェックが簡単にできます。
ジャベリックスローの全身の使い方のほとんどが、野球の投球フォームと共通しています。ジャベリックスローを繰り返すことで、強く・速い球を投げるフォームを体が学習していきます。
怪我の予防になる
ジャベリックスローは野球のボールと比べて2倍以上重いです。遠くへ飛ばそうとして力まかせにジャベリックスローをすると、正しい投げ方ができず肘や肩、腰などに負担がかかって痛みが出ます。この点においても、正しいフォームで投球動作が行えているかのチェックになります。
「ジャベリックスローの投げ方」の項目で示した、肘や肩に負担がかかりにくい正しいフォームを繰り返し練習して、野球をしていても肘・肩を痛めない正しい投球フォームを獲得しましょう。
以前の記事で書いた「ジャイロスティック」も基本的な原理は同じなので、合わせて使うと効果的です。
ジャベリックスローはどれを買えば良い?
ジャベリックスローで使われるジャベリン(やり)は色々な種類があります。基本的には下の3種類だけで良いと思います。特に重さは300g〜600gまでありますが、まず最初に300gの軽いものから始めて、慣れてきたら400gの物を使えば良いです。それ以上の重さは野球のトレーニングには負荷が強すぎるように思います。
ニシ・スポーツ「ターボジャブ」
「ターボジャブ」は株式会社ニシ・スポーツが作成しているジャベリックスロー競技の公式採用品です。長さは70cm、重さは300g・400g・500g・600gと数種類あります。300gでもかなり重いので、まず最初は300gから始めましょう。野球のトレーニングとして使うのであれば、400gくらいまでで十分だと思います。
PIVOT-GEAR「トレーニングジャブ ターボジャベリン」
先に出した「ターボジャブ」はジャベリックスローの競技公式採用品のためか、値段がかなり高いです。他メーカーからも同じ重さ、長さで半額の商品が販売されているので、野球の練習に使うにはそちらで十分です。
アイピーセレクト「フレーチャ」
山本由伸投手がジャベリックスローを練習に取り入れ、一躍有名な練習方法になった後に、野球用品メーカーのアイピーセレクトが開発した、野球のトレーニング専用のジャベリンです。山本由伸投手も以前はターボジャブのタイプのものを使用していましたが、現在はフレーチャを使っているようです。
引用元:読売新聞オンライン
沢村賞・山本由伸の速球磨く…矢のような練習用具、開発したのは「チーム町工場」
https://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/20220222-OYT1T50161/
フレーチャは長さが73cm、重さが400gあり、少し重めのです。最初は300gの「トレーニングジャブ」などを使って、慣れてきたらフレーチャを使うのがおすすめです。
この記事内の画像で使用しているのもフレーチャです。
おわりに
ジャベリックスローがきれいな軌道で遠くに飛ばせるようになれば、投球・送球動作をする時の正しい体の使い方に近づきます。山本由伸投手のようなすごい球を投げられるようになりたい選手は、正しい体の使い方を理解してジャベリックスローを繰り返して体を鍛えていきましょう!
以前の記事でご紹介した「ジャイロスティック」と一緒に使うと、より良い効果が期待できます。
野球パフォーマンスアップの施術希望の方へ
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