理学療法士的考察

【藤浪晋太郎投手をトレードに出す前に!】イップスの原因と復調してきた理由を理学療法士が具体的・論理的に解説

ごあいさつ

理学療法士の尾澤と申します。

理学療法士というと患者様から「マッサージをしてくれる人」「ストレッチの人」「棒の中で歩く練習をしてくれる人」と言われます。

残念ながら、それは本当の理学療法士ではありません。

理学療法士の1番の強みは問題点を的確に絞り出す「評価能力」そして「細かい姿勢や動作の観察・分析能力」にあると私は考えています。

この能力が高くなると「どの動作の、どのタイミングの、どの関節の動きが問題か」が明確になり、修正方法も具体的で明確になります。

エクササイズも具体的でわかりやすく、無駄がなくなるため、患者様もやる気が出るようです。

特にアスリートの方ほど興味を示してくださります。

本日はその理学療法士の強み「動作観察・動作分析」の観点から、藤浪投手のイップスの原因、少し復活してきた理由、今後どうすれば更に調子が戻ってくるのかを考察しました。

よろしければ雑談程度に気軽に読んでいただけると嬉しいです。

藤浪選手を救いたい

藤浪選手は大谷選手と甲子園で投げ勝ったほどの大投手で、日本の宝です。

イップスだなんだと馬鹿にして良いような選手ではありません。

イップスという結果だけに目を当てるのではなく、なぜイップスになっているか具体的な問題点を提示出来なければ意味がありません。

ということで、ただ批判をするような無駄なことはせず、抽象的なアドバイスのようなこともせず、読者の方にも実際に体を使って体感していただきながら、藤浪晋太郎選手をどのようにすれば救えるのかという記事を書きました。

今回の内容は藤浪選手だけでなく、コントロールが悪くて悩んでいる多くの野球選手に当てはまるので、参考にしていただけると嬉しいです。

藤浪晋太郎投手の概要

ポジション 投手
投打 右投右打
身長/体重 197cm/98kg
生年月日 1994年4月12日
経歴 大阪桐蔭高
ドラフト 2012年ドラフト1位

引用元:https://npb.jp/bis/players/41045137.html

個人成績(2022年7月22日現在)

年度登板勝利敗北勝率投球回安打本塁打四球死球三振暴投失点自責点防御率
2013241060.6251370.211910442126848422.75 
2014251180.57916315066411172679643.53 
2015281470.66719916298211221970532.40 
2016267110.38916915211708176678613.25 
201711350.3755953545841530274.12 
201813530.6257170547470545425.32 
2019100040.1406230112.08 
202024160.143760.171540285447344.01 
202121330.5480.147440452829285.21 
202280102123411115112104.29 
通算18154500.5199480.28515944953961524393623.43

コメント

もともと四死球は多いですが2016年シーズンから負け星が増え、2017年シーズンからは登板機会が激減しています。

野球見るならスカパー

藤浪晋太郎選手のイップスについて

イップス議論

2016年シーズンより制球難を露呈するなど不調に陥り、2017年は特に右打者の内角への制球に苦しんで右打者に対して四死球を与えることが多く、一軍では右打者の頭部付近への死球をきっかけに乱闘騒ぎを引き起こした他、二軍でも頭部死球による危険球退場を経験した。この不調の原因として「イップスの発症である」とする声が複数挙がり、様々な憶測を呼んだ。スポーツ選手のイップス改善などに従事する阿部久美子は、藤浪がイップスであることを断言している。
これに対し、一部の野球解説者・評論家は藤浪の制球難をイップスと断定することに否定的な立場を示しており、阪神OBである江本孟紀は、2016年の時点で心の問題ではなく走り込み不足が要因であることを指摘していた他、桑田真澄は2018年3月に行った藤浪との対談で「藤浪くんに足りないのは技術力」と述べている。また、谷繁元信、落合博満、2019年秋季キャンプから臨時コーチとして藤浪を直接指導している山本昌なども、制球難の要因はメンタル面ではなくあくまで技術面の問題であると指摘している。
藤浪本人は自身の制球難について「技術的根拠がなくフィーリングだけでやってきた」ことが要因である可能性に自ら言及。前述の乱闘を引き起こした際には、試合中に捕手の梅野に対して「直球のリリースの感覚がないんです」と告白していたことを明かしている。2017年のシーズンオフに取り組んだ本格的な動作解析により、疲労の蓄積や筋肉量の増大などによって「体の使い方のズレ」が生じていることが判明。その結果、体を正しく操るための技術が不足していることが制球難の要因であると結論付けられるに至った。それ以降は各年のオフ期間を中心に、様々な科学的・理論的アプローチから身体機能を解析・分析し「安定して立ち返れる場所」、新たな「技術的根拠」の確立に取り組んでいる。また、ダルビッシュ有やクレイトン・カーショウらとの合同自主トレでは、大幅な肉体改造などにも取り組んだ。
藤浪の制球難による与死球は他球団や選手からも警戒されており、藤浪が先発時には相手チームは右打者の主力選手をスタメンから下げる他、右打者に左の代打を連発されている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/藤浪晋太郎

コメント

私も心の問題ではなく技術的な問題なのは間違いないと思います。

走り込み不足という指摘は問題点が抽象的すぎて明らかな根性論でナンセンスですが、、

というか、こういう「走り込み不足」のような感覚的な議論しか出てこないから、いつまでも藤浪投手が復調しないのだろうと思います。

結論:藤浪投手のイップスの原因はEarly cocking

原因は明らかで投球相【Early cocking(前期コッキング)】で以下のような異常動作が起きているからであると考えます。

異常動作

・骨盤が前傾しない
・体幹が前傾しない
・股関節を曲げずに膝だけ曲げる

その結果、お尻の筋肉や体幹のインナーマッスルが働かなくなってしまうこと、後方重心となって体が開いてしまうため、右バッターの頭部付近にボールが向けやすくなってしまっています。

Early cockingとはワインドアップして踏み出す側の足(右投げなら左足)が最も高く上がったところから前に重心移動して着地するまでのタイミングのことです。
(下画像前期コッキング相参照)

田中洋ほか:モーションキャプチャ・システムを用いた投球動作解析の障害予防への応用. 臨スポーツ医33:46-50, 2016 引用

この画像は少し復調してきた2022年シーズンのもので、数年前に比べるとかなり改善されています。

この使い方をすることで様々な問題が出てしまいます。

次の項目ではどのような問題が出るかを説明していきます。

藤浪選手のフォーム比較

この項では【藤浪選手の時期別のフォーム】【コントロールの良いピッチャー】との比較を、以下のようにしていきます。

  • 山本由伸投手(コントロールが良いピッチャーの例)
  • 1年目の藤浪投手(イップスと言われていない時期)
  • 2017年の藤浪投手(イップス全盛期)
  • 2022年の藤浪投手(復調してきたと言われてきている時期)

コントロールが良いピッチャー(例:山本由伸投手)

まず、骨盤と股関節の使い方の良い例として山本由伸投手をご覧ください。

これはノーヒットノーランを達成した試合のフォームです。

線を引くとこのようになります。

骨盤が前傾し、体幹全体がまっすぐのまま前傾してくることで重心がつま先側に乗り、安定感が出ます。

山本由伸投手は「ウエイトトレーニングをしない」「体の使い方の練習をする」ということで有名です。

そのようなコンセプトで実績をあげているだけあり、股関節だけでなく全身の使い方が非常に良く、関節への負担が小さく、かつ全身の筋肉が連動して働きやすい、手本とすべき体の使い方です。

藤浪投手1年目(2013年)

イップスで悩まされることなく、多少コントロールは悪かったですが高卒1年目で10勝をあげ、防御率2.75と圧巻の成績を上げています。

線をひいてみるとわかりやすいですが、骨盤は後傾して腰は丸まっていますが、体を全体的に丸めて前側に倒すことで、重心はつま先側に残せています。

その分、左足を踏み出していく際に軸足を多少安定させることができ、コントロールは悪くてもイップスと言われるほど、ボールが抜けずに済んでいます。

藤浪投手イップス最盛期(2017年)

これはヤクルトの畠山選手の頭部へのデッドボール時のフォームです。

他にも右バッターの頭部付近に抜けた投球が多く、ネット上ではイップスをいじられすぎている辛い時期です。

線をひいてみるとわかりやすいですが、骨盤は後傾して腰は丸まっているのに、体幹が起き切ってしまっているため、かかと重心となり、ホーム方向に重心移動をする際に背中側(後方)に倒れていってしまい、体が開くような使い方になってしまいます。

畠山選手への場面はセットポジションであったため、ワインドアップで投げているフォームを載せておきます。

上の写真と同じ2017年シーズンのフォームです。

やはり、脚を曲げた時に体幹が起き切ってしまい、後方重心となることで背中側に流れてしまい、体が開きやすくなってしまっています。

体が開くと、シュート回転がかかりやすいことと、右バッターの方にボールが抜けやすくなるため、デッドボールが多くなります。

藤浪投手少し復調(2022年)

まだコントロールは悪いですが、抜け球が減って、ネット上でも復活してきていると言われてきているようです。

骨盤はまだ後傾していますが、体幹全体を曲げることで重心をつま先の方に落とすことができるようになっています。

1年目のフォームとかなり近くなっています。

フォーム比較

2013年 前方重心
2017年 後方重心
2022年 前方重心

横に並べて比べてみるとわかりますが、成績の良かったプロ入り直後は骨盤がわずかにでも前傾しており、成績が振るわなくなってからは骨盤が後傾していることがわかります。

最近はいくらか復調してきましたが、更に復調するためには山本投手の例のように、

  • 骨盤をしっかりと前傾させる
  • 体幹を丸めるのではなく前傾させる
  • 膝だけでなく股関節を曲げる

ことが必要です。

余談:2019年に右の股関節を痛めた

藤浪選手のイップスについて調べていたら、こんな記事を見つけました。

阪神藤浪19日2軍戦先発、右股関節の状態問題なし(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201907160001053.html

阪神・藤浪、ウエスタン・広島戦の登板を回避 右股関節を痛める(サンスポ)
https://www.sanspo.com/article/20190715-P64AKH3WEZIYLP4MBWLR7ZRKUY/

右足(軸足)の股関節を痛めるのは当然のことです。

骨盤が後傾して股関節が曲がらずに膝だけ曲げてくるようなフォームでは大腿直筋という筋肉を過剰に使ってしまいます

大腿直筋とは股関節の付け根から膝まで伸びる長い筋肉で、膝を伸ばすことと股関節を曲げることに使われます。

股関節が曲がらず膝だけ曲げるフォーム

正しくないフォームで大腿直筋を過剰に使いすぎると、股関節の前側で大腿直筋が癒着してしまう(周りの筋肉などと変にくっついてしまう)ため、股関節の前側に詰まってくるような違和感が生じてきます。

ここの癒着の厄介なところは「股関節を曲げるストレッチをしたいのに、そもそも股関節が曲がらなくなる」ことです。

ここの癒着からくる股関節の硬さ(股関節を曲げると前側に詰まるような痛み・違和感)が生じた場合は、自分でなんとかしようとせずに、専門家に診てもらう必要があります。

自分で行うストレッチや可動域訓練だけでは改善しないどころか悪化する危険性すらあります。

私ならどう改善させるか

もし私が身近にいて改善させるとしたら、目指すゴールはシンプルで、以下のフォームを獲得することです。

ワインドアップからEarly cockingのタイミングで

  • 骨盤前傾
  • 腰は軽く反る
  • 股関節から曲げる
  • 体幹を丸めるのではなく、まっすぐにしたまま前傾させる
  • そこからホームベース方向に重心移動

この画像のような状態です。

そのための集中的なトレーニングを、さまざまな姿勢で行なっていきます。

数年前に股関節を痛めたことから、ちょっとした後遺症で【股関節を曲げる可動域の制限】や【骨盤前傾・腰を反る際の違和感】などが残っている可能性があるため、それを取り除いた上でです。

この使い方が出来るようになって期待できるメリットは以下の通りです。

メリット

  • 軸足が安定したままホームベース方向に重心移動でき、体の開きが早くなるのを抑えられる。
  • 体幹とお尻の筋肉が正しく働き、指先の筋肉の過剰な緊張がなくなり細かいコントロールが出来るようになる。

今シーズンの試合を見ると、フォームが悪くない時もあれば悪い時もあり、かなりムラがあり、いつまた球が抜け出してもおかしくない状況だと思います。

ここから先は身近で実際に施術したり、トレーニングに体動して確認してみないとわからないことが多いので、私の考察はここで終了になります。

この問題点をクリアしたのちに、また新たな問題が発生してくることも考えられます。

股関節の使い方が上手い山本昌さんがコーチとして藤浪選手を指導しているということなので、もしかしたら私が言ったことは既に行われているけれど、何かの問題があって治らないという可能性もあります。

ヤフコメを見ても、藤浪選手に期待している方はとても多く、藤浪選手が復活すれば日本が少なからず元気になると思います。

私も藤浪選手の復活を心から願っています。

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おわりに

いかがだったでしょうか?

少しイメージが湧きにくかった方もいらっしゃると思うので、次回の記事では実際に読者の方に体を動かして体感していただけるように記事を作成いたします。(現在作成中)

今回紹介した骨盤と股関節の使い方は野球の投球動作だけでなく、全てのスポーツに重要な動作です。

基本的にはこの動きを理解して獲得できれば、ほとんどのスポーツで劇的にパフォーマンスが上がります。

今まで野球選手だけでなくサッカー、バスケットボール、陸上などさまざまなスポーツでパフォーマンスが上がったと喜びの声をいただいています。

スポーツをする方は是非獲得してください。

「自分はこう思う」という意見があるかたはSNSなどでコメントいただいて議論ができると嬉しいです。

「よかった・参考になった」という方はSNSなどで拡散していただけると嬉しいです。

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